優しさ

短編小説

短編小説:『誰にも知られない』

ストーリー古い団地の五階。エレベーターのない階段を、清掃員の佐伯は今日も無言で上っていく。朝六時。住人たちが起きる前に、廊下を掃き、ゴミ置き場を片付ける。誰も見ていない時間だった。誰にも気づかれない仕事だった。手すりにこびりついた汚れを落と...
短編小説

短編小説:『優しい人』

ストーリー「お前って、ほんと優しいよな」それは、遥斗が人生で何度も言われてきた言葉だった。怒らない。否定しない。頼みを断らない。空気を悪くしない。だから周りには人がいた。でも、本当に欲しい言葉をくれる人は、誰もいなかった。二十九歳の冬。遥斗...