詩:運がいい
俺は運がいい。
乗ろうとしていた電車を、
目の前で逃した朝。
「最悪だ」と舌打ちしたあと、
ホームのベンチに座って空を見た。
急いでいたはずなのに、
あの数分で、
忘れていた季節の匂いを思い出した。
俺は運がいい。
財布を落とした日、
中にはほとんど金も入ってなかった。
でも、
連絡をくれた知らない誰かの声が、
妙に優しかった。
世の中、
まだ捨てたもんじゃないと思えた。
俺は運がいい。
雨に降られた帰り道、
靴は濡れて、
コンビニの袋は破れて、
散々だった。
けど、
屋根の下で雨宿りしてた子どもが、
笑いながら水たまりを跳ねていた。
「雨の日も悪くない」
そう思えた。
きっと人生は、
起きた出来事じゃなく、
どこから見るかで変わる。
傷も、
遠回りも、
失くしたものも。
全部、
違う景色へ向かう途中なのかもしれない。
だから今日も、
少しくらい上手くいかなくてもいい。
今日も俺は運がいい。
解説
この詩は、「不運に見える出来事も、見方を変えれば意味のある出来事になる」という考えをテーマにしています。
冒頭と締めにある
「俺は運がいい」
「今日も俺は運がいい」
という言葉は、単なるポジティブ思考ではありません。
電車を逃したこと、
財布を落としたこと、
雨に降られたこと。
普通なら「嫌な出来事」として終わってしまう場面ばかりです。
しかし主人公は、その出来事の中にある小さな気づきや、人の優しさ、心の余白に目を向けています。
電車を逃したからこそ空を見上げる時間ができ、
財布を落としたからこそ人の温かさに触れ、
雨に降られたからこそ何気ない笑顔に気づけた。
つまりこの詩は、
「運がいい人」とは、何もかも上手くいく人ではなく、
“出来事の意味を見つけられる人”なのだと伝えています。
人生には避けられない失敗や不運があります。
けれど、それをただの不幸で終わらせるのか、
何かを受け取るきっかけにするのかで、
人生の見え方は大きく変わっていく。
そんな静かな前向きさを込めた詩です。

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