詩:「黒」

詩:黒

黒が嫌いだった。

赤を混ぜても黒。

青を混ぜても黒。

黄色を混ぜても黒。

どんな色と出会っても、

最後には黒のままだった。

 

変われない。

何にもなれない。

誰かの色になれない。

そんな自分を見ているようで、

黒を見るたびに少し苦しくなった。

 

赤は情熱になれる。

青は空になれる。

緑は森になれる。

けれど黒は、

何になったのだろう。

 

ただ、

ある日ふと思った。

 

黒は、

赤を拒まなかった。

青を拒まなかった。

黄色も、白も、

どんな色も追い返さなかった。

 

すべてを受け入れて、

それでもなお、

黒のままでいた。

 

誰かに合わせて姿を変えることもなく、

誰かを否定することもなく、

ただ静かに受け止めていた。

 

それは、

変われない色ではなく、

変わらない色だった。

 

自分を失わずに、

誰かを受け入れる。

 

それは案外、

難しいことなのかもしれない。

 

気づけば、

黒は嫌いな色ではなくなっていた。

 

何色にもなれないと思っていた黒は、

本当は、

どんな色とも共にいられる色だった。

 

だから今は、

少しだけ黒が好きだ。

 

何を受け入れても、

自分を見失わない。

そんな在り方に、

少し憧れている。

解説

詩「黒」について

この詩は、「黒」という色に対する印象の変化を描いた作品です。

多くの色は混ざることで別の色へと変化します。しかし黒は、どんな色を受け入れても黒のままです。

詩の前半では、その性質を「変われないこと」として捉えています。

周囲に影響されても何も変わらない姿は、まるで何者にもなれない自分のように感じられ、黒はどこか寂しく、苦しい存在として描かれます。

しかし途中で視点が変わります。

黒は変われないのではなく、どんな色も拒まずに受け入れながら、自分自身を失わない色なのではないか。

そう気づいた瞬間、「変われない」という短所だと思っていたものが、「変わらない」という強さへと意味を変えていきます。

人は誰かと関わる中で、相手を受け入れようとします。

その一方で、自分らしさを失わないことも大切です。

この詩で描かれる黒は、そんな在り方の象徴です。

何かになることだけが価値ではない。

誰かを受け入れながらも、自分を見失わずにいることにも価値がある。

そんな思いを、「黒」という色に重ねて表現しました。

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